全国の野宿生活者の約1/3が生活する大阪市では、生徒にとって野宿者の存在は日常のものである。その存在が日常的なものであるにも関わらず、生徒たちは野宿生活をせざるを得ない人たちのことを何も知らない。その無知から生まれる差別や偏見が若者による野宿者へのいたずらや襲撃の要因にもなっている。現実に大阪では若者による野宿者への殺人を含む襲撃行為が長年にわたって頻発している。襲撃により被害者である野宿者生活者が、心身共に大きな傷を負うことは言うまでもないが、襲撃の加害者である少年たちも生々しい傷を心に持つことになる。そして、若者がその無知と偏見から野宿者に対していたずらや襲撃をする現実は、青少年の教育に携わる私たちにとって憂うべき出来事でもある。しかし、生徒の無知や偏見が野宿者に対するいたずらや襲撃の要因のひとつであるならば、野宿生活者を「知る」ことによって、いたずらや襲撃のいくらかは防げる可能性がある。学校で「野宿者人権学習」に取り組む意義はここにある。
「野宿者人権学習」で、生徒が野宿者の本当の姿や思い、野宿せざるを得ない社会の現実を知ることを通して、自らの心の内にある偏見・差別を、理解・共感に転換し、差別や偏見のないよりよい社会を実現するために「自分には何ができるか」を考えるきっかけとしたい。
野宿生活者の生活の様子や願いを知る
・「ホームレス」とは、その人の状態を示す言葉であり、その人そのものを指す言葉ではないことを理解する
第1時 平成 年 月 日( ) 校時
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野宿当事者を教室に招いて話しを聞くことが望ましいが、わずか1時間の事前学習での交流は時期尚早である。そこで野宿支援者を講師に招き、教員では伝えきれない、野宿生活者の姿や野宿生活者をとりまく社会の厳しい現実を知る機会としたい。
また、国際協力などの分野で支援活動を行なう人がいるように、野宿生活者に対して支援活動をしている人の存在を知ることや、支援者自身に出会うことは、生徒にとって大きな学びになると考える。
B案 ビデオ「老いて追われて 〜ホームレスからの脱出〜」を視聴 47分
〔内容〕路上や公園で生活している人が増えている。全国で3万人、この2年で1万人増えた。日本の失業者300万人。野宿になって3年目の田中さん。町中のアルミ缶630個を拾って収入は800円。みんな立ち直るきっかけが欲 しい。しかし、いったん野宿になった人を待ち受けている現実とは(番組HPより) 〔制作〕読売テレビ制作 NNNドキュメント 2001年4月22日(日)放送 55分枠
C案 ビデオ「あしがらさん」を視聴 73分
〔解説〕あしがらさんは20年以上も新宿の路上で生きてきた。残飯で飢えをしのぎ、心を閉ざして誰とも付き合わない。ある時、あしがらさんの笑顔に触れた作者は「この人をもっと知りたい」そんな気持ちでカメラを回し始める。ポツポツ語られる言葉に耳を傾け、二転三転する状況に寄り添う。撮る者と撮られる者、3年に及ぶ撮影でいつしか生まれた信頼が、思いもかけない変化をもたらす。新たな人生を歩みだしたあしがらさんの姿は、私たちに微笑みと希望を与えてくれる。それは「人生とは?希望とは?人とのつながりとは?」 と静かに問いかけているのかも知れない。
主体的な学びのために 〜参加型学習を取り入れた授業展開〜 【全5時間】
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