■プレイアデス舞曲集から 吉松隆のよく知られたピアノ曲集からいくつか。
Takashi Yoshimatsu, PleiadesDances

○第1巻から
♪・フローラル・ダンス
2:15 (2012.4rec)
Floral Dance
「プレイアデス舞曲集」第1巻第1曲。「プレイアデス舞曲集」については田部京子のCDがよく聞かれている。この曲の田部京子の演奏もいいけれど、かなりリリカル。(音楽之友の楽譜で2ページ冒頭の)分散和音5小節を「p」で弾いていることが典型的。ここは、普通に読めば「f」では? その結果、「舞曲集」の「ダンス」なのに、その感じがほとんど消えている。この曲は、イエスやマイク・オールドフィールドなどのプログレッシブ・ロックをピアノにしたものだろう。特に、5小節、7小節の和音のアクセントは「チューブラー・ベルズ」をただちに思い出させる。ここではそのつもりで弾いている。
♪・フローラル・ダンス 2:02 (2012.6rec)
Floral Dance
一回こう弾いたけど、この曲は短い繰り返しが多いが、そこを変化や装飾音なしでそのまんま繰り返すのは相当つまらないと気がついた。そこで、繰り返し部分のみに変化を加えている。テンポもダンスっぽく前より早くとった。
♪・アップル・シード・ダンス 2:10 (2012.5rec)
Apple Seed Dance
ピアニスティックな魅力にあふれた曲で、反復音や反復されるフレーズが弾いてて気持ちいい曲。

○第2巻から
♪・線形のロマンス 2:38 (2012.4rec)
Alignment Romance

こういう曲では、田部京子の演奏は非常にいい。特に高音のかすれんばかりの歌。ただ、田部京子は「歌っている」がぼくは「つぶやいている」感じ。
♪・鳥のいる間奏曲 1:01 (2012.4rec)
Interlude with Birds
「朱鷺によせる哀歌」以来、吉松隆にたびたび現われる「鳥の音楽」。
♪・断片的な舞曲
1:38 (2012.6rec)
Fragmentary Dance

休符をはさんだ跳躍音による「断片」性を追究した曲。16分音符の拍子が3→5→3→5→4→5→3→5→3→5→4→5→3→5…とほぼ全曲1小節ごとに変化するのにノリがすごくいい。

○第3巻から
♪・聖歌の聞こえる間奏曲 2:32 (2012.4rec)
Interlude with a Hymn
とてもシンプルだが印象に残る曲。なぜでしょう(不協和音の使い方かな)。

○第4巻から
♪・前奏曲の記憶 2:03 (2012.5rec)
Memory of Prelude
これも曲の大半で小節ごとに拍子が変わるが、いっぺん聞くと誰でも「これ、いい曲だな」と思うだろう。「小さな春への前奏曲」とともに、親しみやすく魅力的な音楽になっている。

○第5巻から
♪・真夜中のノエル 2:32 (2012.4rec)
Noel in Midnight

ごく簡単な進行の中、ほぼ装飾音だけで音楽を成立させている。これもシンプルなのに印象に残る。

○第6巻から
♪・小さな春への前奏曲 1:29 (2012.5rec)
Prelude to Little Spring
シンプルで親しみやすい曲。小学3〜4年生でも練習したらすぐ弾けるでしょう。

○第7巻から
♪・途切れた淡い前奏曲 1:46 (2012.5rec)
Interrupted Faint Prelude
半音階進行を活用した曲。美しいメロディが途切れながら歌われる。
♪・静止した夢のパヴァーヌ 2:57 (2012.4rec)
Static Dream Pavane
かなり悲痛な響きを持つ「Adagio」のパヴァーヌ。様式的にはもっと早いテンポで弾くべきだろうが、あえてこのテンポで。
♪・遠い夢のロマンス 2:18 (2012.5rec)
Distant Dream Romance
ベタなタイトルだが、異名同音を使った転調が何度も行なわれている。楽譜を見なくても、聴いていると転調の箇所がわかるでしょう。
♪・優しき風のロンド 1:51 (2012.5rec)
Tender Wind Rondo

右手の8小節の音型が繰り返されるロンド形式。タイトルに反して曲想は吹き荒れている。


♪・ビアノ・フォリオ 2:57 (2012.4rec)
Piano Folio
「プレイアデス舞曲集」の補遺として1997年に書かれた(『レグルス回路』音楽之友社)。この曲の副題は「消えたプレイアードによせて」で、作曲者によれば、ギリシャ神話の7人姉妹プレイアデスのうち消えた1人がいる伝説に由来する。
確かに「補遺」なんだけど、この曲は、「プレイアデス舞曲集」本篇のどの曲より、音楽的にも技術的にも高度になっているんじゃないだろうか。柿本人麻呂の長大な「長歌」の余韻を短い「反歌」が引き受けて別の次元へと引き上げていくように、「プレイアデス舞曲集」全9巻とこの「ピアノ・フォリオ」一篇もほぼ対等に立っているようにも見える。繰り返される音型のみずみずしさは何度聞いても素晴らしい。一方、技術的には、中間部の分散和音はかなり広い音域を高速に駆け回るので、反復練習を相当にしないと「さま」にならない。
この「ピアノ・フォリオ」は、YOUTUBEに榎本玲奈のライブがアップされている。

★電子ピアノによる編集なしの一発取り
音声ソフト「Audacity」で残響を加えた

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