2001年夏の日本橋での野宿者への放火襲撃について


▼7月19日午前4時20分、浪速区日本橋の路上(野宿者ネットワークの夜回りのコース)で62才の野宿者に対する放火襲撃。救急隊により警察病院へ搬送される。
23日に野宿者ネットワークのメンバーが面会に行ってきた。以下、その報告。
「Kさんの話。アルミ缶を集めている。いつも(事件の)現場に寝るわけではないが、その日は疲れて、ダンボールをひいて寝た。午前3時ぐらいまで寝付かれなかった。仰向けに寝ていて、気づいたら股が火に包まれて燃えていた。(事件発生は、おそらく4時ごろ)。慌てて消そうとしたので他のことはわからない(なぜ燃え上がったのかわからない)。が、「ヒャハハハ」という高い笑い声が聞こえた。とにかく燃えているズボンとパンツを脱ぎ捨てた。(状況を聞く限り、このとっさの行為が上半身への引火を防いだと思われます)。現場でも、警察と話をしたように思うが、よく覚えていない。その後病院には警察は来ていない。」
 担当医師によると(Kさんの同意を得て病状照会)、陰部、両下肢の火傷、全身の10%。大体2度の火傷だが、10%のうち2%(手のひら2枚分ほどの範囲)は3度、つまり重傷。部分的には、やけどが深いところがあるので、手術することになるだろう。現時点では2ヶ月ぐらいの入院か。Kさんは思ったよりも元気そうだった」。
その後も順調に回復中。退院後の生活相談にも応じる予定。

▼7月29日、19日の現場から歩いて5分の場所で再び放火襲撃。
読売新聞30日付。「29日午前5時52分ごろ、大阪市浪速区日本橋5の路上で、ダンボールをしいて寝ていた野宿生活者の男性(62)が若い男に油のようなものをかけられ、火をつけられた。通りかかった焼き肉店の店員が119番通報。そばにいた別の野宿者とともに、布団で火は消し止めたが、男性は胸や腹にやけどを負い重症。若い男はそのまま逃げた。浪速署は殺人未遂事件で捜査。調べでは、男性は火をつけた男について当初、「約1.5メートルで、黒い服を着て髪がオールバックだった」といっていたが、その後「よく覚えていない」などと言い直し、はっきりしないという」。
 襲撃された労働者は大阪府立病院に入院している。
31日、野宿者ネットワークのメンバーが様子を見に行ってきた。以下その報告。
「まだ救急病棟にいました。痛みがひどいなどの理由で、薬で意識を抑えられています。したがって本人から話を聞くことはしばらくできない状態です。最初見たとき、顔も含めて全身に火傷している状態なので驚きました。担当の医師によると、全身35%の火傷、18%は3度の火傷、救命できるかどうかというところ。数回は手術を行い、退院は少なくても2〜3ヶ月以上かかるであろう、そして後遺症もそうとう残るであろう、ということです。」
 現場近くで野宿している人たちに聞いたところ、朝6時頃、「ああー」というすごい声でびっくりして外へ出てみると、火のついた状態でSさんが走ってきた。あわててみんなで水をぶっかけたり布団でくるんだりして火を止めたという。19、29日のどちらの現場も、野宿者ネットワークの夜回りのコースに入っている。29日の現場については、28日の夜10時頃つまり襲撃の8時間ほど前に、19日の放火襲撃についての情報と警戒を呼びかけるビラをまいたばかりだった。
その後、Sさんは命はとりとめることができた。しかし、退院がいつになるかなどはまだまったく予定が立たない状態にある。

▼また、ネットワークの土曜よまわりでは、同場所付近で、これに関連するらしい話を労働者から聞いていた。17日前後、明け方に10代ぐらいの若い2人組が白い乗用車で乗りつけてくる。空き缶に油を入れ、花火を発火装置にして遊んでいる。そして、寝ている労働者のダンボールに向けて花火の火を向ける、などである。
なお、現場付近で野宿している人たちの話では、警察は29日深夜にパトロールしただけで、あとは来ていないという。犯人も捕まっていない。

▼8月14日早朝に、やはり日本橋で3人〜5人の若者たちが寝ている野宿者に殴る蹴るの襲撃を行い、あばらを何本か折る事件が発生。

▼この後、9月18日に天王寺区で野宿していた53才の棚橋健志さんが中学3年の男子生徒たちに暴行され殺害される事件が起こっている。

(読売新聞18日夕刊)
18日午前3時40分ごろ、大阪市天王寺区小橋町の路上で、中年の男性が頭から血を流して倒れているのを近くの人が見つけ、119番した。男性は病院に運ばれたが後頭部を強く打っており、意識不明の重体。
 天王寺署の調べでは、男性は40〜50歳で、野宿生活者風。現場から中学高校生風の少年二人が「これはやばいで」と言って自転車で走り去るのが目撃されており、同署は傷害事件として捜査している。二人のうち、一人は、赤色シャツに赤色サンバイザーをかぶり、髪を金色に染めていた。もう一人は肩までの長髪だったという。

(朝日新聞22日夕刊)
大阪市天王寺区の路上で18日未明、野宿生活をしていた棚橋健志さん(53)が血を流して倒れ、20日に死亡した事件があり、大阪府警天王寺署は20日夜、東成署に出頭してきた中学3年生の男子生徒を傷害致死容疑で逮捕した。調べによると、男子生徒は18日午前3時40分頃、棚橋健志さんをけるなどして死亡させた疑い。事件当時、現場には中高生風の男が2人いたといい、府警は別の少年が事件にかかわっているとみて男子生徒から事情を聴いている。 男子生徒は「数人で歩いていたところ、男性にからまれトラブルに。顔をけったら、倒れて頭をうったので逃げた」と供述しているという。