日本橋・心斎橋での襲撃一99年1〜9月一
ひん発するエアガン襲撃・放火・花,火・爆竹…を許すな!
       ネットワークの夜回りノ一トから


 野宿者ネットワークは、95年10月の野宿労働者藤本彰男さん虐殺(戎橋から道頓堀川へ投げこまれた)を契機に、この事件を風化させないために結成された。
 よって、西成公園や関谷町公園での野宿労働者支援運動(排除を許さないたたかい)、さらに野宿から生活保護を勝ち取っていくたたかいなどと共に、路上や公園で野宿を余儀なくされる労働者に対する襲撃を許さないたたかいも、大きな位置をもって進められてきた。
 ここでは、毎週土曜目に行っている「夜回り」から、主に路上における野宿労働者襲撃の状況を報告したい。
 野宿者ネットワークの「夜回り」は、毎土曜午後8時に釜ヶ崎の「ふるさとの家」前を出発し、主に釜ヶ崎周辺地域である日本橋・心斎橋・阿倍野・天王寺などをまわる。「夜回り」の時間帯としてはわりあい早い時間帯なのだが、野宿労働者となるべく話しができる時間帯を意図しているためだ。この毎土曜「夜回り」の際に、野宿している労働者などから寄せられた情報を、襲撃が頻発している日本橋と心斎橋に限定して一覧にしたものが下の別表である(99年1月〜9月)。
 路上での野宿労働者に対する「いやがらせ」の類(「いやがらせ」という表現は決して適切とは思わないが)は、もちろん、別表に一覧した程度ではすまない。空き缶(中身の入っているものも含め)の投げこみ、火のついたタバコの投げ入れ、自転車での通行中の蹴り込み(寝ている労働者の上に直接自転車を乗り入れるという事態も目撃されている)などは、連日のごとく発生しており、寝入っている労働者が気がついた時には襲撃者の姿は見えず、という事態は日常茶飯事といってよい。こうした「いやがらせ」に類するような事態ですら、怒りを禁じ得ないが、しかしタバコの投げこみなどが、いかに野宿労働者の生命身体への直接的な攻撃であるかは、もはやここに語るまでもないことだ。事実、タバコの投げ入れ(多くは路上脇でダンボールで囲いをした仲間が毛布にくるまって寝ているところに投げ入れられる)が原因となって、毛布などから出火、危うく惨事になりかけたという事態は、枚挙に尽きない。
 日本橋でんでんタウン周辺で、今年の3〜5月に発生した放火、そしてその後も継続しているエアガン襲撃(別表ならびに新聞記事参照)、あるいはロケット花火による襲撃などは、さらに質が悪い。
 エアガン襲撃から見てとれることは、まず、襲撃者が事前の準備を周到に行っていること。車両・武器(エアガン)の準備はもとよりだが、襲撃を繰り返された仲間たちの証言によれば、事前に車両で徘徊し「下見」を行っている場合が多い。さらに車両を用いた工アガン襲撃の場合は、運転手とエアガンを発砲する者が「役割」を分担、助手席からの発砲という例が日本橋では多発している。時間帯は、労働者たちが寝入っている深夜を狙うので、多くの場合、逃走する車両の「色」を識別するのがやっとの有様である。
 だが、繰り返される襲撃と野宿者ネットワークの夜回りビラ(野宿者ネットワーク通信『路上版』)からの情報に基づいて、多くの仲間が、襲撃車両の特定に気を配ってくれた結果、別表のとおり、車種からナンバーの一部まで判明したものもある。そしてそのことからいくつかの同じグループによって襲撃が繰り返されていることも明らかとなっている。
 野宿を余儀なくされた労働者への路上や公園での襲撃は、いわゆる「若者」によるものという感覚が多いだろうが、決して「若者」に限定されるものではない。夜回りや公園からの情報を漠然とではあるがまとめると、投石やロケット花火などの襲撃は確かに中高生を中心としているものの、先述したエアガン襲撃は明らかに20歳代のもの(襲撃者は時として、発砲後に野宿労働者が慌てて起き上がるのを現認し、その上で差別的な言辞を投げって甫度顔面等を目がけて発砲する場合があり、労働者が襲撃者の声を聞くあるいは暗闇の中とはいえ顔を見ることができる機会も少なからずある)。また、日常茶飯事に発生する空き缶・タバコの場合は、むしろ「サラリーマン風」という報告が実に多いのだ。そして、本号でも報告している山下さんへの襲撃を行った蛭井らは、もはや「若者」という年齢ではない。
 こうした野宿労働者に対する襲撃の背景には、間違いなく、野宿労働者に対する差別・偏見が横たわっている。野宿労働者支援運動の中で、これまでも、「襲撃」は野宿労働者に対する差別・偏見を根拠とするものであることは指摘されてきているし、ネットワーク自身も語ってきたことではあるが、しかし、襲撃を廃絶していくためには、その内容をより深く考えていくことが必要だ。また一方で、「差別・偏見」という大きなくくり方のみではなく、より詳細に襲撃の根拠に迫っていくことが求められているのかもしれないと、
感じる事態が多々ある。多くの場合、襲撃者は「ここで寝るな」という言辞を弄している。公園や路上で野宿を余儀なくされている労働者が、地域や行政によって、あからさまな排除にさらされている状況の中で、この社会では「野宿労働者排除」を「正当」とする構造が根強い。襲撃と排除の構造が根深く結びついているといわねばならない。加えて、襲撃を「ゲーム感覚」で行うという事態も現出していると聞く。例えば、火のついたタバコの投げこみやロケット花火の撃ち込みが、その労働者の生命に直結する暴挙であるという認識を根本から欠落させている。
 野宿者ネットワークでは、緊急電話の設置の他にも、公園・路上での襲撃が頻発した際、独自の夜回り体勢の強化(時には夜警も含め)やマスコミに訴え社会問題化するなどの手段を講じて、襲撃に対する対抗策を練ってきた。山下さん裁判の支援もまた、山下さんの悔しさを自分たちのこととしてとらえていくと共に、繰り返される襲撃に「一矢報いる」という気持ちもあった。夜回りの強化やマスコミヘの情報提供は、確かに襲撃者への一定の抑止効果はある。しかし、もとより、根本的な解決には程遠い。夜回りの「あり方」を含め、今後の討議が必要と感じているメンバーも多い。そしてそのためにも、ネットワークの力量を高めなければならない。夜回りへの参加・協力を求めて、報告にかえたい。                             (文責:N)


1999年1〜9月・日本橋、心斎橋襲撃記録


【日本橋】
道具屋筋を含む=(道)
日本橋でんでんタウンの本通り 東側=(東)、西側=(西) (裏)=裏通り

1.2(土)
(道)午前3時、サラリーマン風の男女4〜5入が蹴る。

1.20(水)
(道)たばこの投げ捨てし毛布がこげて目が覚める

2.6(土)
(西)ふとんに放火。糞尿をふとんに置く。

3.19(金)
(東)午前2時半、アビック前で白のワゴン車「大阪ナンバー一6714」からエアガンで背中を撃たれる。襲撃者は20歳代の2名、エアガンは助手席から。

3.22〜4月中旬
(東)阪神高速下で放火あいつぐ。1回目(3月22日糊)は、テント3張り消失、火傷で1名入院。襲撃者は油をまき散らしてから放火し「すごい火の勢いだった」。
2回目(4月13〜14日?)の放火も、1回目と同じ場所。襲撃者は、放火前に野宿している仲間の自転車を千枚とおし状のものでパンクさせている。

4.2(金)
(西)(裏)午前4時半、自転車から「オッさん死ね」と蹴られる。

4.11(日)
(西)(裏)午後5時半、15〜6歳の若者、ピンポン玉大の花火を2度投げこむ。自転車で逃走。

4.14(水)
(西)深夜0時〜1時、日本橋3丁目(ジョウシン3番館前)で2度にわたってエアガン襲撃。
(東)午前3時〜5時、阪神高速下でエアガン襲撃。

4.24(土)
(道)午前1〜2時の間、自動車1台とバイク4〜5台が、走り抜ける。 (道具屋筋のアーケード下は、深夜、両側で仲間が寝ている。間隔はわずか3メートルほど)。
(西)エアガン襲撃は1〜2月にも発生していたとの情報。

5.1(土)
(東)午前4時、中高生3人組が自転車で蹴る。

5.4(火)
(西)(関谷町公園)テント3軒にエアガンと花火による襲撃。

5.9(日)
(東)午前0時半、日本橋4丁目、ワインレッドの乗用車(ナンバー8797)が向い側(西)のパーキングからエアガン発射(ダンボールに命中)。複数(3名)の乗車する車両に単身立ち向かおうとすると再度発砲(身体に命中)して逃走。
(その後、午前0時33分にネットワークの緊急電話に通報。)
(西)午前0時50分、日本橋3丁目でエアガン発砲により2人連れの1名が顔や首に負傷。救急車で運ばれる。(上記車両と同じ襲撃者と考えられる。)

5.13(木)
(西)午前1時45分、日本橋3丁目と4丁目の境、白いバン(?)からエアガン発砲。
眉間に命中して出血。起き上がったところを急発進。車両は路肩すれすれに止まって発砲。

5.21(金)
(西)中川ムセン本店前、午前1時すぎ、シルバーの乗用車から生卵の投てき(身体には命中せず)。同所で午前3時、再び生卵の投てき(額に命中)、エアガンも発砲。
午前2時、日本橋3丁目(ジョウシン3番館前)でエアガン発砲。
(西)2週間ほど前、車2台からオロナミンCのビンを投げつける(ジョウシン5番館前)。
1週間ほど前、深夜0時すぎにエアガン発砲(柳屋電気前)。
(なお、20日?午前3時、寺下でも、何回もエアガン襲撃が繰り返されている。
日本橋と同じく生卵も投げられたとの情報が寄せられている。)

5.24(月)
(西)時刻不明、花火(爆竹?)襲撃。

5.26(水)
(西)午前2時、ダンボールを蹴りとばされる。
(西)時刻不明、自転車に乗った3名(40歳代)にゴルフクラブで殴打される。

5.28(金)
(東)午後11時、自転車に乗った中高生ぐらいの2人組、エアガン襲撃。5〜6人の仲間が被害に遭う。(バイク?)

5.29(土)
(西)午前2時、バイクからエアガン襲撃(上記と連動?)。同時刻頃、(西)(裏)でもバイク2台でエアガン襲撃。

6.2(水)
(西)午前2時、バイク2台からエアガン襲撃。

6.23(水)
(西)阪神高速下、午前3時、白い乗用車(スカイラインGT?)から爆竹の投げこみ。

7.6(火)
(東)日本橋公園、午後8〜11時、40歳代の男「テントを燃やすぞ上と叫びながら椅子さらにはバールで仲間に殴りかかる。バールで殴られた仲間は縫う。

7.30(水)
(西)火のついたたばこを投げこまれ軽い火傷。

8.7(水)
(東)阪神高速下、午前2時前、エアガン襲撃。仲間1名、救急単で搬送。胴体には赤い弾痕が2週間後にも残っている。

8.10(火)
(東)愛染公園、花火襲撃。

8.16(月)あたり?
(西)(裏)深夜0時半、白いバンからエアガン襲撃。右腕に被弾しアザが残っている。

8.19(木)
(西)午後9時、黒い乗用車から花火襲撃。一回りした後・再度花火を投げこむ。

8.27(金)
(西)(ジョウシン3番館前午前1〜2時・白い軽自動車(ナンバー1863)から花火襲撃2度。襲撃車雨は周辺を4回ほど徘徊した後、襲撃に及んでいる(不審車両ということで仲間が警戒していた)。

9.6(月)
(東)深夜、自転車に乗った25〜6歳の男に足をけられる。

9.7(火)
(道)酔ったサラリーマシ風の男がダンボールを蹴り、もみあいとなる。

9.29(水)
(西)午前2時、サラリーマン風の男が空き缶と生ゴミを投げこむ。


【心斎橋】

1.23(土)
カラオケ店が閉まる土曜の朝5時ごろ、若者がダンボールを蹴る。

4.24(土)
午前4時ごろ、三木楽器前で、ダンボールに放火。

4.30(土)
北心斎橋の公園、ウイスキーのビン4〜5本をダンボールに投げる。

5.15(土) 未明、北心斎橋の商店前に放置されたダンボールに放火。

6月上旬
南心斎橋で若者による襲撃あいつぐ。蹴る、ものを投げるなど。

7.17(土)
ダンボールに放火の情報(1週間前)。

9.11(土)
丸善前でエアガン襲撃の情報(3〜4週間前)。