2011年度野宿者ネットワーク福祉相談

1 野宿者ネットワーク福祉相談活動について
 福祉相談活動は、生活保護制度を利用して生活している元野宿者や生活に困窮した人たちを支援していくことです。過酷な野宿の問題にさまざまに取り組んできた野宿者ネットワークは、当初から生活保護の入口に関わりつつも組織的な形での関わりには難しさを抱えてきました。そこにはやはり原因や背景があるのですが、今ではむしろ野宿の問題からしても大きな意義がある活動として、徐々に活動の確立が進んでいます。
 同時に野宿の問題も20年前のバブル経済の崩壊する以前とは明確に変わってきています。建設日雇い労働者を中心とした季節的、周期的な経済津波による失業から、サービス業・運輸業さらに製造業まで様々な労働者が失業の中でホームレスとなって野宿せざるをえなくなってきました。何も想定外とは言えないでしょう。あり得ることなのですから、充分に準備できないまでも日々考えていかねばならないことなのでしょう。そこには日本社会の経済構造的問題があると思われます。さらに高齢化や障害の問題が折り重なり若者たちの働き方一生き方など、社会的に<積み重ねられた貧困>の問題があるのではないでしょうか。   福祉相談は生活保護制度を活用して、新たな生活に立ち向かおうとする人たちを支えていくこと、あきらめないで継続していけるように当事者に寄り添うことを大切にしていきたい。

2 現状と課題
 福祉相談活動では、現在2種類のボランティア活動を確立しようとしています。
第一は、訪問ボランティアです。
 その内容はアパートでの孤立(孤独)を防ぎ、生きがいをもって生きることができるよう支援することです。できるだけ定期的に訪問します。
 同時に施設(寮)や病院で孤独にならないで希望をもって退院、退寮できるよう、途中で施設や病院を退出してしまわないように、定期的に訪問します。さらには病院との折り合いがうまくいかないときは病院を変更することも支援したい。またできるだけ短期間で施設からアパートに移れるよう支援

も行いたい。
 医療・介護、金銭管理や生活上のさまざまなトラブルに対応していけるように手伝い、求職活動などの付き添いなども行っていきたい。
 現在アパートへの訪問がかなりできるようになりました。施設、病院への訪問、お見舞いも行えるようになってきました。
 しかしまだまだボランティア個人のがんばりのところです。そうならざるを得ない面も多々あるのですが、今後も活動を事業化して多くのボランティアが参加できるよう考えたい。
第二に交流会(寄り合い)を行います。
 当事者同士の親睦が大切です。さらに当事者と支援の、支援者同士の親睦も大切です。
 ビンゴゲーム、トランプゲームなどや春の花見などリクリエーションを行います。形式にこだわらず<楽しさを>充実させたい。さらに社会見学や勉強会なども企画していきたい。
 現在当事者24名を対象にしています。アパートにお住まいの方19名。施設入所の方3名、現在(5月14日)入院中のかた2名です。5月1日の寄り合いへのお誘い葉書は21枚送付しました。
 ボランティアは福祉相談メーリングリストに登録されている方は、28名です。そのうちボランティア保険に加入して寄り合い、訪問に参加されている方が20名(当事者2名を含む)です。

3 方向について
 福祉相談活動は生活保護受給をしている会員にたいして少しでも快適で意義ある生活を送れるようになることをめざしていきたいと思います。確かに経済的には「最低限度の生活水準」ですが、いろいろ工夫をし上手にやれば<快適な生活>もあり得ると思います。
 なにせ一人住まいであり、高齢で病気がちの方もおおいので、深い信頼関係をつくりながら本人の希望を引き出していきたいと思います。同時に生活健康管理、さらに金銭管理にもたずさわらざるをえません。
 信頼関係は確かに長期に渡らざるを得ないものでしょうが、しかし一回一回の関わりの積み重ねでもありますから毎回が勝負でもあります。その都度しっかりした関わりを意識していきたいと考えます。

 現状では個人的な関係が主にならざるをえないでしょう。しかし個人的な関係だけではすぐに手いっぱいの限界にぶつかります。やはり組織的、事業的な取り組みを主にしていかざるを得ないでしょう。そこでも深い信頼関係がまず必要ですが、それでも法的・契約的なものにならざるを得ない面があると思います。
 なにより豊かな人間関係を目指したいと思います。豊かさの大きな目安は、更生的・矯正的関わりではなく、当事者本人の選択であるかどうかです。当面は孤独死をなくすこと、他方酒やギャンブルに溺れないように快適で、豊かな生活を工夫できるように支援できることをめざしたい。そのためには個別の訪問だけではなく定期的な交流がおおいに工夫されねばなりません。そのために地域とのかかわり、地域資源の活用にも目を向けていきたい。

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